まえがき
まえがき
翻訳の底本として使用したのはレオニナ版である。レオニナ版を基礎としながら、テキスト批判資料(apparatus criticus)をふくむマリエッティ版を参考にした(S. Thomae Aquinatis doctoris angelici Liber de Veritate Catholicae Fidei contra errores Infidelium seu “Summa contra Gentiles”, Vol. II, C. Pera, P. Marc, P. Carmello ed., Marietti, Taurini/Romae, 1961)。
聖書からの引用については必要に応じてEditio Vulgata(ヴルガータ)、特に13世紀に使われていた聖書に近いとされるVulgata Clementinaとの異同を確認した。訳出にあたっては新共同訳(日本聖書協会、1987年)とフランシスコ会聖書研究所訳によることが多く、それ以外の訳を参照した場合にはそのことを記した。アリストテレス、およびアウグスティヌスをはじめとする教父、聖書注釈、教令集などからの引用、参照に関しては一般的な原則に従った。
本書のタイトルにある「異教徒」に関しては、諸説はあるが、おそらくプラトン、アリストテレス、およびアラブ系の哲学者、つまりキリスト教以前またはキリスト教以外の思想家を指していると思われる(Gauthier, R.-A., Saint Thomas d’Aquin, Somme contre les Gentils Introduction, Editions Universitaires, 1993 参照)。本書にはもう一つの伝統的な呼び名、“Summa Philosophiae”(哲学大全)がある。これは、「神学大全」と区別する意味もだろうし、聖書と異なる思想を相手としているからでもある。この点では、本書は歴史的意義を超えて、現代的な意義をも持ち続けていると訳者は思っている。
トマスが現代日本に住んでいたら、誰を相手にしてどのような哲学を展開させるだろうか。翻訳にあたって、まさにそういう地平線にたった考えからである。
米国のMIT(マサチューセッツ工科大学)とハーバード大学などの学生の間で伝道師として活躍しているチャン(張忠恕)師の「対異教徒大全」の現代的解釈も大変参考になった
Curtis CHANG, Engaging Unbelief. A Captivating Strategy from Augustine & Aquinas, InterVarsity Press, 2000, 187pp)。